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鹿児島天文館酒場巡礼



続きは「天文館徒然草」でどうぞ

「天文館酒場巡礼」をお楽しみいただいている皆様。
このブログは、2007年〜2008年に南日本新聞夕刊に連載いたしました「大人のための絵本天文館」執筆のための取材ノートを公開したものです。その連載は、2009年5月「大人のための絵本 天文館物語」として上梓されました。皆様のご声援のお陰と、こころより感謝いたします。

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さて、「天文館酒場巡礼」ですが「「天文館酒場巡礼 ごはん編」として、近々に更新再開予定です。今しばらくお待ち下さい。その間は、

清水哲男の「鹿児島天文館徒然草」

でお楽しみください。こちらも天文館の話題満載でお届けしています。
# by tenmonkan_sakaba | 2010-12-08 10:51 | お知らせ

島にもイノシシはいるのだ

第52回 居食処またぎ

島にもイノシシはいるのだ_a0070493_14405070.jpg前々から気になっていた。その店の暖簾は、「徳之島産地直送」と染め抜かれていた。が、その下に「またぎ」と大きく店名が。「またぎ」といえば猟師のことだ。イメージとしては東北の村田銃を方に担い、柴犬を引き連れ雪深い山に入り、冬眠している熊を撃つ。そう、熊撃ちに長けた猟師だ。私の中では「徳之島」とまったく重ならなかった。

しかし、店に懸けられた幕には、「いのしし」「猪豚」という文字が躍っている。徳之島でイノシシが獲れる……。いや、そもそも島にイノシシというものが棲息しているのだろうか。疑問は深まっていく。だって、こちらでは昔からイノシシを「山クジラ」というではないか。(写真は大将の永井良徳さんと奥さんの悦子さん。6月いっぱいで店を人に任せて徳之島に帰った。本店があるのだ)

島にもイノシシはいるのだ_a0070493_14431651.jpg疑問を抱えながら暖簾を割った。生ビールを注文し終えると、やおらたずねた。「徳之島にイノシシがいるのですか」と。店主の永井良徳さんは笑いながら答えてくれた。「いますよ。本土のイノシシより少々小ぶりだけど、ちゃんといますよ」と。考えて見れば島だって山だ。周囲を海に囲まれているだけで……。日本列島って、みんなそうじゃないかと、妙な納得をした。(写真は猪肉の塩焼き)

永井さんの話によると、肉質は本土のイノシシに比べて小ぶりな分、よくしまって淡白なんだそうだ。永井さんは毎年、罠を仕掛けたり、もちろん撃ったりで、30頭ばかりイノシシを捕らえるという。捕らえてさばき、肉にするだけではなく、島豚とかけて猪豚を生産している。写真を見せてもらったが、黒豚よりももっと黒い、真っ黒な猪豚、真っ黒なイノシシといったほうがいいような感じだった。

早速その猪肉を塩焼きにしてもらった。確かに脂は少なく淡白で、その上イノシシ特有の臭みがない。ボタン鍋にしてもうまそうだ。永井さんの話によると「皮の味噌漬け」がうまいらしいが、残念ながら品切れだった。

島にもイノシシはいるのだ_a0070493_14434578.jpgさらに、「これは徳之島じゃなくて、屋久島のものですけど」と鹿刺しを出してくれた。こちらもとても食べやすい。島にも猟師やイノシシがいるというのは初めて知ったことだったが、その肉のうまさも初体験だった。(写真は鹿刺し)

もちろん徳之島直送の地魚、地鶏の料理もうまいが、まずこの猪肉を食べて欲しい。永井さんはそういって笑ったが、私もその通りだと思った。世の中未知の味はたくさんあるのだ。

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居食処 またぎ
住所 鹿児島市下荒田1丁目5-11-1 有馬ビル1階
電話 099-206-8850
営業時間 午後5時~午前0時
定休日 不定休
# by tenmonkan_sakaba | 2008-07-06 14:45 | その他

ただ座って酒を飲むばかりなり

第51回 居酒屋めぐちゃん

ただ座って酒を飲むばかりなり_a0070493_13345542.jpgよくもまあ、こんな狭い敷地に店を並べたものだ。はじめてその風景に出くわしたとき、正直そう感じた。市電に乗って市内の方々をうろうろしていたんだ。降りたのは南鹿児島駅前。地名でいうと南郡元ということになるのだろう。

南鹿児島駅前電停から二軒茶屋に向かって、旧谷山街道を歩いた。ものの3分も歩かないうちに、その長屋が姿を現した。市電の軌道敷と旧谷山街道の隙間、そう隙間だ、の狭い敷地に7軒もの居酒屋が並んでいた。どの店もおそらく10坪はあるまい。南鹿児島駅から二軒茶屋に向かって、「もぐら屋」「秀ちゃん」「しず」「とまり木」「めぐちゃん」「京子」「ふくちゃん」そんな小さな店が肩を寄せ合うように並んでいるのだ。経営者や店の名前は変わっても7軒の店が並ぶのは、昔からの風景だそうだ。だからこの酒場長屋を土地の人は「七軒長屋」と呼ぶそうだ。

ただ座って酒を飲むばかりなり_a0070493_13361081.jpg時計を見ると、午後7時前だった。が、店を開けていたのは「めぐちゃん」と「とまり木」の2軒だけだった。飛び込んだのは「めぐちゃん」。なんとなく名前にひかれたのだ。歴史の古い「七軒長屋」で開店して6日目という新しい店だった。東京新宿で酒場をやっていたママが、故郷に帰ってはじめた酒場だ。もとは脇田電停の近くでやっていたらしい。
「でも、店が広すぎてね。人を雇うほどもうからないし…」ということで、「七軒長屋」に越してきたのだと。

たしかに、ここならママ1人でやるには手ごろな広さだ。7人も入れば満席になるカウンターだけの小さな店。奥行きは3メートルほどか。壁の向こうは市電の軌道敷だ。時々市電が通ると、ゴォーと腹の底から響くような音がする。それもまた郷愁そそられるBGMになる。背中は壁1枚隔てて旧谷山街道だ。こちらはひっきりなしに車が通る。いかにも、という感じの酒場らしい酒場だ。

「小さな酒場だからね、たいしたものはないよ」と、手料理を何やかやと出してくれた。品書きを見ると、どれもママの手料理だった。懐かしいクジラのベーコンがあったのでそれをもらう。飲むのはもっぱら焼酎お湯割り。むつかしいことは何もない。ただ、カウンターに向かって座り、小鉢をつつきながらお湯割を飲む。それだけでいいのだ。

ただ座って酒を飲むばかりなり_a0070493_13371161.jpg「めぐちゃん」はママの名前ではなく、飼い猫の名前だという。名前など聞かなくても酒は飲める。それ以上は聞かなかった。カウンターの端に若い先客がいたが、お茶ばかりを飲んでいる。開店して間もないので、どんな客が来るか不安だからと息子さんが「用心棒」役を買って出ていたのだ。さしづめ私は合格といったところだろうか、にこやかに会話をしてくれた。

開いていたのは2軒だけだったというと、「七軒長屋」の開店は7時過ぎだという。居酒屋なのに遅いじゃないかというと、「だって朝4時までやってるもん」って。7軒とも開店、閉店は同じ時間だそうだ。

昔の話を聞くと、ママは「私も受け売りだけど」と前置きしながら、三和町や真砂で紬の機織をしている職人さんたちが、仕事明けに自転車で飲みにやってくる酒場街だったそうだ。「いまはだいぶ様子もかわったようだけどね」と。

時計を見た。10時をまわっている。3時間も腰をすえたようだ。その間に焼酎の5合瓶を1本と、会話をたっぷり。7軒とも入って見るつもりだったが、またにしよう。今夜はこれくらいで……。

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居酒屋めぐちゃん
住所 鹿児島市南郡元27-31
電話 099-286-4539
営業時間 午後7時~午前4時
定休日 日曜日
# by tenmonkan_sakaba | 2008-06-15 13:47 | その他

ちゃんと仕事ができる余裕

第50回 食遊び 味彩

ちゃんと仕事ができる余裕_a0070493_9575418.jpg「食遊び」、肩につけられたひと言が気になった。

この店を紹介してくれたのは、いつものバー、ブルージー・タヴァーンのマスターだ。だから味に間違いはあるまいと思って、家人と2人で出かけた。思っていた通り、電飾の看板も自らの存在をことさら強調せず、控えめに灯っていた。山之口本通に面したビルの1階だ。

が、その「食遊び」というひと言にひっかかったのだ。マスターの話では「ちゃんとした和食の店ですよ」ということだったので、私はふつうの割烹を思い描いて店の前に立ったのだ。が、「食遊び」は、いま流行の「創作料理」の店を思い描かせた。

一瞬ためらったが、ここまで来たんだもういいやと、思い切って暖簾を割った。土曜日の午後8時前。食事の時間には少々遅いから、きっと空いているだろうと……。が、カウンターはほぼ満席。小座敷も満席だった。客層はなかなかいい。ただ、同伴出勤前の食事という感じの何組かが気になる程度だった。

しかも、満席に近く、忙しいにも関わらず、ホールの係りの女性がこちらを認めるや、すぐに「いらっしゃいませ! 何名様ですか」と駆け寄るようにして来てくれたことが、私を安心させた。往々にしてこんなとき新規の客、しかも初めての客など無視されがちなのだが……。それだけでも、この店がきちんとした店であることを物語っているなと思わせる。

ちゃんと仕事ができる余裕_a0070493_133413.jpg「2人ですが」というと、「はい、お部屋がご用意できます」と。
通されたのは、いちばん奥の、小座敷よりも一段高くなった2畳ほどの方丈の間だった。床もあり、ちょっとした茶室という感じだ。家人を上手に座らせ、私は入り口に近いところに。先ほどの女性がすぐにおしぼりを持ってもどってきた。飲み物はとたずねるので、生ビールの小を2杯と、品書きにあった「八海山」の純米大吟醸を2合、それに刺身の盛り合わせを頼んだ。ビールは瞬時に出てきた。

品書きを見ていると焼酎はもちろん、清酒も幾種類かあり、さらにワインも用意されていた。2人でぶつぶつ言いながら品書きを見ていたら、女将さんらしき和服姿の女性が「八海山」を運び、上がり口で「本日はようこそお越しいただきました」と丁寧に挨拶を。よく見るとその女将、私がいつものバーで外が明るいうちから飲んでいるときに、いそいそと出勤するのを何度も見かけたことがあった人だった。向こうはそんなこと知る由もないだろうが。

ちゃんと仕事ができる余裕_a0070493_1343189.jpgビールといっしょに出てきたお通しは、ふぐの皮の煮凝りと、もやしと付け揚げをピリッと炒めたもの、さらにひじきを煮たもの。追いかけるように刺身が出てきた。サバ、サーモン、カンパチ、ミズイカ、マグロ、カイバシラ、シタガイ、それにボタンエビ、シマアジの薄造りと9点盛りだ。豪勢だな。しかし、下手な寿司屋で食べるよりもうまかった。どれも下ろしたてというより、しっかり時間をおいて、まさに造ってある。さばいて、切って、盛ってだけでなく、ちゃんと仕事がしてあるということだ。

魚のうまさも手伝って酒2合などあっというまだった。同じ「八海山」をもう1合頼むついでに、家人が春野菜のかき揚げを注文する。これまたすぐに揚がって出てくる。つけ出汁もよい加減に温めてある。が、なんといっても塩だ。春野菜は苦味がいい。油もしっかり切れている。当たり前のことが、当たり前にきちんとされている。マスターが紹介してくれたことにもうなずけた。

ちゃんと仕事ができる余裕_a0070493_1352080.jpgさて、ずっと気になっていたことがあった。清酒の品書きに「嘉泉 極めつけ辛口」というのがあった。しかも東京の醸造酒だ。純米酒や吟醸酒が並ぶ中、しかも有名な銘柄が並ぶ中、なんだか「これ、飲んでみろ」と挑発されているようで、じゃあということで、それを1合とソラマメの塩焼きを。
この酒、正直にいって驚いた。口に含むときに空気といっしょにずずっとすすっる。さらに空気を入れるようにして口の中で転がす。実に辛い。そしてうまい。これほど辛い酒は、能登半島は門前の「亀泉」以来だ。この酒を飲みに来るだけでも価値のある店だ。

聞けば大将五反田実さんは、現在50歳ちょっと手前。料理人としても脂ののりきったキャリアだ。この店を開いて15年くらいになるという。この競争の激しい天文館で15年。なるほどとうなずくしかないなと思った。

ちゃんと仕事ができる余裕_a0070493_1310689.jpgところで「食遊び」だが、品書きには実にいろんな料理が書き込まれていた。ビーフシチューや豚足まで……。余裕だな、と思った。ちゃんと仕事ができるからこそ、「食遊び」などという余裕が語れるようになるんだ、きっと。

また、通いたくなる店が1軒増えた。


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食遊び 味彩
住所 鹿児島市千日町9-3 天文館K・BLD1階
電話 099-226-7560
営業時間 午後5時〜午前0時
定休日 月曜日
# by tenmonkan_sakaba | 2008-04-07 13:07 | 千日町

みなさまの大衆食堂

第49回  天文館むじゃき

みなさまの大衆食堂_a0070493_10354169.jpg昔、といっても昭和30年代から40年代にかけての話だ。天文館には「本田食堂」「大天食堂」「無邪気」「池田食堂」「第一食堂」「まるぜん食堂」「梅八食堂」「中村食堂」「ハッピー食堂」などといういわゆる大衆食堂が人気を集めていた。

その「無邪気」が、いまの「天文館むじゃき」だ。
「天文館むじゃき」は、大衆食堂「無邪気」として昭和21年(1946年)、名山町で産声を上げている。その後その大衆路線をずっと走ってきたことになる。「天文館むじゃき」というと「白熊」と即答する人が多いし、「白熊」というと「むじゃき」と答える人が多いが、実際に店に足を運んだ人ならご存知だろうが、「白熊」は呼び名のユニークさがインパクトとなり、「天文館むじゃき」を全国的に有名にしたひとつの象徴に過ぎない。食べ歩きのタレントではないが、「まさに食の遊園地」という感じだ。その後24年(49年)に天文館千日町に移り、38年(63年)に名称を「天文館むじゃき」に変えている。

みなさまの大衆食堂_a0070493_10361170.jpg先にも紹介したけど、大勢の人は「白熊」の店だと思い込んでいるようだが、昔の大衆食堂、街のレストランの最後の生き残りだ。1階は午前11時の開店だけど、日・祝日、そして7月、8月のふた月はなんと午前10時に開店している。もちろん「白熊」目当ての客が多いことを想定してだろう。

「白熊」はレギュラーとベビーのふたサイズある。レギュラーが各683円。ヘビーは483円。これに白玉やプリン、ヨーグルトがのるとそれぞれ788円、583円になる。「焼酎みぞれ」(630円)という鹿児島らしいものまである。ちなみにレギュラーサイズは2人で1個を食べてもかまわないのだ。

だが、私のおすすめは、生ビールセットだ。中ジョッキに枝豆とギョーザがセットになっていて、さらに焼豚、春巻、バンバンジー、サラダから好きなものを1品選べる。それで924円だ。隣のテーブルで「白熊」に奇声を発する女の子たちを横目で見ながら、昼間からぐっと飲む生ビールはなかなかいける。

みなさまの大衆食堂_a0070493_10364983.jpg「天文館むじゃき」はいまや、「白熊」から「お好み焼き」「焼き鳥」「中華」「洋食」「てんぷら」「しゃぶしゃぶ」など、大阪でいうなら「くいだおれ」のような、デパートの大食堂が一軒のビルになったような何でもありの大型大衆向けレストランになり、大型ショッピングセンターに支店を出したり、テイクアウト、宅配、通販など多角的に事業を展開している。

こういう大衆的で、手軽で、気軽なレストラン。がんばってほしいな。


天文館むじゃき
住所 鹿児島市千日町5-8
電話 099-222-6904
営業時間 11:00〜22:00(日・祝日、7〜8月は10:00開店)
定休日 無休
# by tenmonkan_sakaba | 2008-04-01 10:34 | 千日町


天文館酒場ガイド

by tenmonkan_sakaba
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へべれけになってるのは
天文館の犬=清水哲男
1954年 京都市生まれ 同志社大学文学部哲学及び倫理学科専攻卒業
卒業後職を転々とし各地を放浪の後、1980年頃より執筆活動をはじめる。
主に市井の人々の暮らし、労働の現場に入り、自分が見たこと、聞いたこと、体験したことを頼りに思考し書き続けている。1997年より鹿児島市在住。
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放浪ネコ=能勢謙三
1950年9月、鹿児島市生まれ。
一応、市内の会社に勤めながら、盛り場探訪を第2の仕事とする。
天文館に限らず騎射場、西駅付近にも夜な夜な出没。
アトランダムに歩き回ってはダラダラ酒を飲み、街と人を観察している。 野宿することもしばしば。
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